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伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
ヴァチカンのエクソシスト
23/7/14(金)
TOHOシネマズ 日比谷
「医師ではないし心理学者でもない」そうエクソシスト(悪魔祓い担当の神父)のアモルト神父は言う。けれど彼はすべてが悪魔の仕業だとも思っていないし、精神疾患を抱えているクライアントを突き放すこともしない。しかもこの神父は実在していたというのも面白い点だ。悪魔憑依か精神疾患か?これについては映画『エミリー・ローズ』でも語られたように現代社会でも問題視されている永遠のテーマだ。 精神疾患(主に統合失調症)患者が患う幻聴や幻覚だと悪魔祓い神父が見極めた時、どう対応するのか?その描写だけでアモルト神父の人柄がすぐ分かる脚本から本作が現実を受け止めたオカルト・ヒーロー映画だと理解できる。だからウィリアム・フリードキンの『エクソシスト』的恐怖を期待するのはお門違い。とはいえよく出来ているし、実際にアモルト神父の実話から着想を得た物語というからリアリティがある。更にヒーロー映画特有のバディものでベテラン神父と新米神父VS悪魔という展開で、一気にアクション映画へと転生する。ついでに相棒は『イット・フォローズ』『ドント・ブリーズ』のダニエル・ゾヴァットというのもニヤけるキャスティング。 しかも笑いのセンスを持つ熱血神父をラッセル・クロウが演じるので、クマちゃん系愛されキャラの神父というビジュアル力も増した本作。オカルト・ホラー好きとしてはたまらないヴァチカンの図書室の再現や、悪魔祓いの文字が刻まれたメダイ、ローマ教皇役にマカロニ・ウェスタンのジャンゴことフランコ・ネロという、随所にファン悶絶のキャスティングやアイテムが登場するシリーズ化希望の映画だ。
23/7/10(月)