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パリ発、ヨーロッパで話題の作品を
佐藤 久理子
パリ在住、文化ジャーナリスト
CLOSE/クロース
23/7/14(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
32歳のルーカス・ドン監督が自身の子供時代を重ね合わせたという瑞々しさと、その一方でこれが長編2作目というのが信じられない成熟を見せる作品。友達以上、恋人未満の13歳の少年ふたりの仲が、クラスメートにからかわれたことから、彼らの絆に亀裂が生じていく。 社会はなんと残酷なことだろう。否、この年齢の子供たちは残酷ということすら意識していないのかもしれないが、それによって取り返しのつかない傷を負うふたりがあまりに痛々しい。彼らは、まるで非情なハンターを前にした鹿のように無防備だ。 それにしても、まったく素人だったという少年役のふたりの俳優があまりに素晴らしく、胸にきりきりと迫ってくる。優れた監督というものは、素人からもプロに引けを取らない感情表現を引き出してみせるものだが、本作もまたその一例と言える。
23/7/21(金)