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歌舞伎、文楽…伝統芸能はカッコいい!
五十川 晶子
フリー編集者、ライター
歌舞伎座新開場十周年「八月納涼歌舞伎」
23/8/5(土)~23/8/27(日)
歌舞伎座
八月納涼歌舞伎 第二部『団子売』 江戸時代、江戸市中では、夫婦の団子売りが踊りながら口上を言い立てて団子を売るのが人気を集めていたという。その様子を大坂に舞台を変え、義太夫と、明るくてちょっぴりエロティックな歌詞に乗せて、軽快な舞踊に仕立てたのがこの『団子売』。 夫婦者の団子売りが餅の屋台をかついで花道をやってくる。男は杵造、女はお福。二人は臼と杵でテンポ良く足を踏みつつ踊る。客席を、この夫婦の言い立ての見物客に見立てるところも楽しい。 杵造が重たい臼を転がしながら舞台中央に据えると、炊き立ての餅をぶるんぶるんと揺らしながら盆から臼へと移すお福。その餅のホカホカと柔らかい様子は本物の餅のようで、ついゴクリと喉が鳴る。 「雪か花かの上白米を」「痴話と手管でさらして挽いて」「情をこねてしっぽりととび団子」と餅をつく。「やれもさ ウヤヤレ ヤレサテナ 臼と杵とは女夫でござる」「やれもさ ウヤヤレ ヤレサテナ 夜がな夜ひと夜」と、杵を男性、臼を女性に置き換えて、男女の仲睦まじい様子を暗喩するという、なんとも無邪気できわどい歌詞になっている。そのついた餅をちぎって丸め、子供が次々に生まれる様子を物語る。五穀豊穣、子孫繁栄の願いを込めているのだ。 餅をつき終わると「お月様さえ嫁入りなさる」「年はおいくつえ」と童歌に。「そうだよ高砂尾上の」で二人は片肌脱ぎになり、尉と姥になって「目出たい松に」で幕切れとなる。ちなみに「めでたい」つながりで、歌舞伎座3階で販売中の「めでたい焼き」は、中に紅白の団子が餡子にくるまれており、味覚と視覚で楽しませてくれる。すぐ売り切れるので要注意だ。
23/7/23(日)