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演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

いつぞやは

29歳の若き才能、加藤拓也の作・演出『いつぞやは』。作品名は、大正、昭和のジイさん、バアさんが挨拶などに使ったフレーズかのようだが物語の中で暗示されている表現でして……。 時代は2010年代後半、場所は都内の小さな居酒屋、カラオケ付きの居酒屋、劇場、青森のスーパーとカフェ、そして主人公・一戸の家と変化する。登場人物は6人のみ。さらに、だ。驚くほどの台詞劇。 一戸のかつての劇団仲間だった松坂という青年が語る回想から幕を開ける。ーー「その友達が亡くなる前に会いに来てくれた時の話です」ーー。舞台は意外な所で突如切り替わり、台詞は微細に書かれていて、いつしか悲しみがこみ上げてくる展開だ。一戸はステージ4という末期の大腸癌を患い、三分の二の摘出手術をしたものの半年の余命宣告を受けている若者なのだから。 6人の精鋭。一戸が窪田正孝、松坂が橋本淳、昔の仲間の小久保が夏帆、坂本が今井隆文、大泉が豊田エリー。一戸が故郷に戻って再会する時、シングルマザーになっていた同級生の真奈美が鈴木杏。 個性的な役柄で異彩を放つ窪田の“アッ”と驚くだろう姿と繊細な表現力、舞台経験は少ない夏帆の台詞術はどうだろう。実力派舞台人と言っていい鈴木杏。 親友同士がビンタをし、ビンタを返す。そんな場面の中に、『いつぞやは』が見えてくるだろう。

23/8/18(金)

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