Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

ユニークな選択眼!

春日 太一

映画史・時代劇研究家

卒業 ~Tell the World I Love You~

色とりどりなタイの美青年たちの織り成す、BL感の強いバイオレンス青春映画。刺さる人には、思い切り刺さる作品だろう。 主人公の高校生・ケンは深夜、麻薬の売人・ボンが街角で組織に襲われているのを助けてしまい、そのために売人のリーダー格に狙われることに。そのために巻き起こる、友情のドラマが物語の軸になる。 ストーリー展開自体は細部に強引なところもあるが、バンコクの混沌とした薄暗い路地裏を捉えた画はどれも魅力的だし、暴力シーンもド迫力。強烈な湿気がスクリーンを通じて伝わってくる熱い映像が、濃厚な友情ドラマとあいまって、作品世界に最後まで没入することができる。 周囲をトラブルに巻き込むことも厭わずに動き続け、それでもなお周りも協力し続ける。そんな天然の魔性ともいえる主人公像に、演じるスラデット・ピニワットの中性的な美しさが説得力を与えていた。 それから、映画の本筋ではないところにも、関心の行くポイントがあったことを記しておきたい。 それは、主人公の母親が中国に出稼ぎをしており、自身も中国留学のための奨学金を得るために努力をしている──という設定だ。 こうした設定の場合、以前なら“目標”となる国はアメリカだったりオーストラリアだったり日本だったりしたものだ。 が、本作では、当然のように中国一択なのである。中国がかつてのような大国として、この地域の覇権的な地位に君臨していることを思い知らされたりもした。

23/8/24(木)

アプリで読む