水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

イヤな映画、主人公の悲劇がお好み

真魚 八重子

映画評論家

復讐の記憶

認知症の老人が復讐の旅に出る映画といえば、アトム・エゴヤン監督の『手紙は憶えている』という傑作があるが、韓国からも新たに見応えのある作品が登場した。50代のイ・ソンミンが80代の老人<通称フレディ>に扮し、わずかな記憶を失わないうちに、60年前の家族を襲った悲劇の復讐を果たしていく。 戦争という大きな出来事の中でも、無為な人殺しや女性への凌辱を楽しんで行った兵隊の存在は報告のみならず、本人たちの証言すら多く残る。そういった残酷な振る舞いに積極的に加担した者もいれば、兵隊になること自体不本意だった者もいるだろう。老いによる死を意識したフレディは、戦争で憎悪した者の名を体に彫り付け、若い友人<通称ジェイソン>を巻き込んで、しわだらけの手を血に染めていく。その老人が長きに渡って抱えた、深い深い怒りがどこまで向かうかを、ぜひ見届けてほしい。

23/8/28(月)

アプリで読む