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高松 啓二
イラストレーター
ヒンターラント
23/9/8(金)
新宿武蔵野館
第一次世界大戦後、元敏腕刑事のペルク中尉はロシア捕虜収容所から解放され祖国オーストリアに戻った。その頃、街では異常な連続殺人事件が発生し警察はペルクに協力を求めるが……。監督は『ヒトラーの贋札』でオスカーを受賞したステファン・ルツォヴィツキー。とにかくダークで奇妙な映像に圧倒される。建物は歪み、窓も平行垂直でなく、まるで悪夢のような感覚に陥る。監督自身が語っているが、当時画期的だったサイレント映画の名作『カリガリ博士』を再現している。ドイツ表現主義と呼ばれ、歪んだセットが特徴的で本作ではCG処理でさらにリアルに強調されている。そのため撮影はほとんどブルーバックで撮られている。また、終戦直後の混沌とした社会情勢も描かれる。特に戦争のおかげで社会進出できた女性ケルナー博士の存在は、印象に残る。彼女のセリフ「私は今日を楽しむ。明日は明日よ」は象徴的。歪んだ世界が生んだ迷宮事件に迷い込め!
23/8/30(水)