Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

ほつれる

削ぎ落とされた脚本とショット。それだけで十分伝わる彼らの複雑な感情。人は言葉では取り繕ってしまうけれど、行動だけは制御しづらい。それを理解している加藤拓也監督と、彼の物語に引き寄せられたかのような何処か似ている人々の小さくて大きな波に浸る84分。 だって劇中、門脇麦と染谷将太が似ていると思う時点で、カップルは成立してしまうのだからキャスティングにこだわった事もこれだけで読み解ける。そして気がつけば門脇麦演じる綿子にシンクロし、今は姿の見えない人々の“優しさ”に間接的に触れたような気持ちになり、涙が溢れた。 人が犯した愚かな罪を浄化する作用とはこのような映画のことを言うのかもしれない。そして“削ぎ落とし選び抜かれた言葉と場面”で、多くの人が自分ごとのように見てしまう映画になるのだ。別に大きな感情の揺れやドラマティック過ぎる演出もない。日常とは、そんなものなのだ。悲しみはじわじわと押し寄せてくるものであり、感情も努力次第で何度でもやり直せる。それが人間の弱さで美しさなんだと映画は伝えているようだった。

23/9/6(水)

アプリで読む