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植草 信和
フリー編集者(元キネマ旬報編集長)
カンダハル 突破せよ
23/10/20(金)
新宿バルト9
2001年のイラン映画『カンダハール』(監督:モフセン・マフマルバフ)は、初めてアフガニスタンの都市カンダハルの混沌を描いた映画として忘れ難い。難民の実態、地雷、内戦、飢餓。オープニングの日食のシーンは、希望の光が射さないカンダハルの暗喩そのものだった。 そのカンダハルが主要舞台となる本作は、アメリカ国防情報局の職員ミッチェル・ラフォーチュンがアフガニスタン赴任時に体験した実話をベースにしたアクション映画。同じ中東が舞台でも、ドキュメンタリー・タッチの『カンダハール』とはテイストは違うが、アフガニスタンの政治的恐怖と混乱、民族の対立の激しさを浮き彫りにしているという点では共通する。 内部告発による機密情報漏洩で正体が明らかとなってしまうCIA工作員トム・ハリス(ジェラルド・バトラー)。彼がミッション遂行中のアフガニスタンから脱出するために、敵の追撃をかわしつつ400マイル離れたカンダハルのCIA基地を目指すという物語。イランの精鋭集団・コッズ部隊、パキスタン軍統合情報局(ISI)とハリスの孤立無援の闘いが、壮絶なアクションを交えて描かれる。 監督は『エンド・オブ・ステイツ』『グリーンランド 地球最期の2日間』につづき、バトラーと3度目のタッグとなるリック・ローマン・ウォー。現在進行形の複雑な中東情勢を踏まえた、リアリティあるエンタテインメント作品に仕上がっている。
23/10/22(日)