事実は小説よりも奇なりと思わせられる物語だけれど、『シェイプ・オブ・ウォーター』では半魚人とロマンチックな恋に落ち、『パディントン』では当たり前のようにクマにも優しいサリー・ホーキンスがヒロインを演じると嘘のような話にたちまちリアリティが吹き込まれる。ホーキンスの信頼と実績の存在感を、改めて実感させられました。 世紀の発見の裏側には粘り強い調査があったと思いますが、この映画が面白いのは若きリチャード三世をイマジナリーフレンドのように彼女のそばに出現させて、対話や導きを描き出しているところ。着地点を知りながら観ていたのに、このままでは主人公が不安定な女性だとさらに誤解されるのではないだろうかと、妙にハラハラしてしまいました。まさに周囲のこういう視点をくぐり抜けて、フィリッパは偉業を成し遂げたということなのでしょう。フリアーズ監督は権威主義にはとことん手厳しく、レッテルを貼られがちな女性たちへのエールとも言える作品です。

23/9/27(水)