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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

極限境界線 救出までの18日間

本作『極限境界線 救出までの18日間』は、実際にアフガニスタンで2007年に起きたタリバンによる「韓国人23人拉致事件」を基にしたフィクショナルな韓国製ポリティカル・アクション映画。 かつて世界を震撼させたタリバンの闘争や拉致事件は、映画『アウトポスト』『君のためなら千回でも』『ローン・サバイバー』『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』『アフガン零年』などの諸作でその実態が詳らかにされてきた。ではその16年前のタリバンの蛮行をなぜ今、韓国は映画化したのだろうか? その謎は映画を見終えても解けないのだが、中東ロケを敢行したスケールの大きさと人質救出というスリリングな展開には、韓国映画ならではのパワーがみなぎっている。 タリバンに拉致された自国民を救出しようと奮闘する外交官(ファン・ジョンミン)と中東工作員(ヒョンビン)。ふたりがアフガニスタン政府と軍事組織タリバンの双方にネゴシエーションを挑むも、利害が複雑に絡み合い過ぎて事態は一向に進展しない。やがてタイムリミットが迫りタリバンの人質殺害予告が告げられるが……。 外交官に扮したのはあの傑作『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』での名演が忘れ難い名優ファン・ジョンミン。現地工作員を演じたヒョンビンはいうまでもなく『愛の不時着』で大ブレークした超人気スターという魅力的なキャスティング。そんなふたりの初共演という話題に付け加えて、ヨルダンでの大規模撮影によるスケール感と、政治的駆け引きが生む緊迫感が楽しめる一見の価値ありの韓国サスペンス映画だ。監督は『提報者 ~ES細胞捏造事件~』のイム・スルレ。

23/10/15(日)

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