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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎、文楽…伝統芸能はカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

歌舞伎座新開場十周年「吉例顔見世大歌舞伎」

吉例顔見世大歌舞伎『鎌倉三代記』 外題には「鎌倉」とあるが、大坂夏の陣の時代を鎌倉に移して描かれた義太夫狂言の傑作だ。源頼家=豊臣秀頼、北條時政=徳川家康、その頼家に仕えるのが坂本方の三浦之助義村=美男で知られる猛将木村重成だ。 時政の坂本城攻め(=大坂城)が始まっている。父時政と許嫁、三浦之助との間で板挟みとなるのが、時政の息女時姫だ。『本朝廿四孝』の八重垣姫、『金閣寺』の雪姫とならび、「歌舞伎の三姫」と称される女方の大役だ。 この時姫、時政の娘でありながら敵方の三浦之助のところへ押しかけ、戦へいってしまった三浦之助の代わりに、絹川村に隠居している姑・長門の世話をかいがいしく務めている。 三浦之助は戦場から一旦は戻るが、敵方の娘の時姫への疑いはいまだ晴れない。自害しようとする時姫に三浦之助は、自分と添いたければ時政を討てと命じる。 一方、道化のような姿で現れる北條方の使者藤三郎は、時政から「時姫を無事連れ戻したら姫をやる」と言われてやってくる。秀頼に嫁いだ家康の孫娘千姫を救い出した、坂崎出羽守のエピソードを思い起こす設定だ。 藤三郎は時姫にしつこく言い寄るが、斬りつけられて井戸へ逃げ込む。しかしこの藤三郎、実は三浦之助方の武将佐々木高綱だった。時姫に時政を討たせようと、三浦之助と図っていたのだった。 「親を捨て命を捨て、主に従うは弓取りの道、夫に従うは女の操。不孝の罰の当たらば当たれ」と時姫は父を討つ決意をし、高綱と共に鎌倉へ、三浦之助は討死覚悟で再び戦場へと向かう。 略称「鎌三(かまさん)」。 今月は6年ぶりに歌舞伎座にかかる。三浦之助を中村時蔵、時姫を中村梅枝がいずれも初役で、そして佐々木高綱を中村芝翫、母長門を中村東蔵で送る、重厚な時代物狂言の醍醐味を堪能したい。

23/10/23(月)

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