昨年の東京国際映画祭でグランプリ、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞を獲った作品。『おもかげ』を撮ったロドリゴ・ソロゴイェン監督がスペインで実際に起きた衝撃の事件を映画化した。フランス人の夫婦アントワーヌとオルガはスローライフに夢を抱き、スペインの山岳地帯の小さな村に移住する。しかしあることがきっかけで、村人たちと対立関係になり……。 公式サイトでサム・ペキンパー監督の名作『わらの犬』と比較しているが、夫の視点で描いた前半はまさにそんな感じ。“田舎と都会の対立”を起点に暴力の生まれる瞬間をリアルに捉え、まさに背筋が凍る出来。白眉なのが妻の視点で描いた後半部分で、『おもかげ』でも女性の視線の繊細さを掬い取っていたソロゴイェン監督ならではだろう。また、「女性の繊細さ」などというステロタイプな言葉に納まらないラストシーンは、新たな才能の誕生を感じさせる。これからどんな作品を生み出してくれるのか、楽しみである。

23/10/28(土)