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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

ゴジラ-1.0

これまでのゴジラ映画では、コジラとの戦いの場は地上がほとんどだった。海の中でゴジラが倒されるのは、最初の『ゴジラ』くらいか。 この映画では、本格的な海戦が描かれ、まずそれが新鮮だった。それも時代は敗戦直後なので、現在の最新鋭の軍艦や戦闘機があるわけではない。原始的というか素朴な兵器しかない。そんな海の闘いは、メルヴィル原作の『白鯨』や、ヘミングウェイ原作の『老人と海』、あるいはスピルバーグの『ジョーズ』の系譜の上にありそうだ。 『シン・ゴジラ』は、対ゴジラ戦を、総理大臣以下の政府、軍隊、科学者、さらにはアメリカと多くの視点から描いたが、『-1.0』では、神木隆之介演じる元特攻隊の「個人的な戦い」に絞っている。 さらに、『シン・ゴジラ』が、もし現代の日本にゴジラのような巨大生物が現れたら、政府や自衛隊がどう動くかのシミュレーション映画だったのに対し、『ゴジラ-1.0』は、敗戦直後という政治と軍事の空白期を舞台にし、精緻なシミュレーションは最初からやる気がない。総理大臣の出て来ないゴジラ映画だ。 敗戦直後、日本は占領下にあり、帝国海軍も帝国陸軍も解体され、自衛隊はもちろんその前身の警察予備隊もない。完全に丸腰の状態にある。そこに巨大生物が登場したら、いったい誰が相手をするのか。 占領下なのでアメリカ軍は日本にいるのだが、米ソ冷戦が始まっているので動けないということになっている。 アメリカ軍はあてにならない、日本軍は解体され、自衛隊もまだない。というわけで、民間人がゴジラを倒すために集められる。この設定はかなり無理がある。予算はどこから出ているのかとか、指揮系統はどうなっているのかとか、『シン・ゴジラ』で鍛えられているので、いろいろ考えてしまうが、そういう細かいことは求めても無駄なようだ。そもそもゴジラが荒唐無稽なのだから、政府側の荒唐無稽さも許容しないと、楽しめない。 ないものねだりかもしれないが、『シン・仮面ライダー』についで特撮ヒロインとなった浜辺美波を、ライダーの時のように、もっと活躍させてほしかった。

23/11/2(木)

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