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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

ナポレオン

フランス大革命直後、王妃マリー・アントワネットがギロチンで処刑されるところから始まり、ナポレオンが失脚して流刑となり亡くなるまでが描かれる。ギロチンのシーンでは、本当に首が斬れて、生首が掲げられるのを描く。徹底したリアルさには、たじろいでしまうほど。 革命後のフランスは、目まぐるしく政治体制が変わり、権力者も交代する。昨日の英雄は明日には国家の敵になる。フランス国内だけでなく、周辺諸国との関係も変化する。こうした背景について、この映画は、大河ドラマのように懇切丁寧なナレーションはなく、最低限の説明しかない。この時代のフランスを中心としたヨーロッパの政治について、ある程度の知識を持ってから見たほうが理解しやすい。 リドリー・スコットの狙いはフランス史を描くことではなく、「人間ナポレオン」を描くところにあるようだ。そのナポレオンも、軍人・政治家としてではなく、ひとりの女性に翻弄される弱き男として描かれる。 物語の主導権を握るのは、ナポレオンの妻となるジョゼフィーヌで、これをヴァネッサ・カービーが演じている。この映画でのジョゼフィーヌは、何を考えているのか分からない、正体のつかみどころがない女で、数か月前に公開された『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』で彼女演じたホワイト・ウィドウに共通するものがある。無表情という表情が得意なのだろう。 かくして、ナポレオン同様に、観客もジョゼフィーヌの真意が分からず、その得体の知れない魅力というか魔力に振り回されることになる。 もちろん、すさまじい戦闘シーンも見応えはあるが、ナポレオンとジョゼフィーヌの勝者なき闘いのほうが、印象に残る。

23/11/16(木)

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