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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
ショータイム!
23/12/1(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
映画には娯楽とアートがあっていい。けれど本作は実話をベースにした娯楽でありながら、しっかりと映画が世界に影響をもたらすと信じた企画になっていて、制作スタッフの情熱を感じた。冒頭からカントリーミュージックを流し、農場の危機に向き合う中年男性の姿を映し出す。いっけん冴えない主人公に見えるが、彼がやりがいを見つけた途端、どんどん魅力的な男性へと変化していくのだ。 しかも彼が農場でのショーに選んだ人々は見事なまでの“ダイバーシティ”となっていて、女装家だったり、耳が聞こえづらかったり、孤独な老人だったりとバラエティにとんでいる。確かに“仕事”として考えれば、老人もマイノリティになるわけでそこは目から鱗だった。 けれど彼らをシリアスに描くわけでもなく、とことんハッピーに振り切った展開とパワフルなまでのポジティブなメッセージに映画を観る喜びを再確認した。映画には音楽があり、様々な人が存在し、色とりどりの生き方が描かれる。それと実際は現実社会も同じ。個人的には監督の音楽チョイスが気に入った。しかもその曲を登場人物が自分の人生とリンクさせて語るエピソードが、香辛料のように後のストーリーに良い味わいをもたらしていく展開には恐れ入った。
23/11/29(水)