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平辻 哲也
映画ジャーナリスト
市子
23/12/8(金)
テアトル新宿
交際3年、プロポーズを受けた翌日に、突然、姿を消した女の壮絶な人生を描く。この一行のプロットラインが秀逸だ。幸福の絶頂に姿を消すというのは、どういうことか。プロポーズした男は何を思うのか。次々に興味をそそられる。人間ドラマでもあり、サスペンスでもある。 原作は監督の戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品ということだが、舞台感はない。本作は、恋人の長谷川が市子の過去を追い、時間と空間を旅するロードムービーになっている。 主演の杉咲花がとにかく素晴らしい。高校時代から失踪する現在までを演じる。あどけなさ、狡猾さ、決意。瞬間瞬間に感情をにじませる。心血を注いだと胸を張る本作は、代表作の一つになった。映画賞でも、主演女優賞の候補に挙げられるだろう。 恋人役は若手実力派の若葉竜也。彼の目を通して、市子の波乱の半生を知ることになる。この冬、激推ししたい1本。
23/11/30(木)