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日本で上映されるアジア映画はおまかせ

紀平 重成

コラムニスト(元毎日新聞記者)

燈火(ネオン)は消えず

香港の夜景を見れば誰しもが「東洋の真珠」とその美しさをたたえます。本作品は建築法等の改正により、2020年までに9割のネオンサインが姿を消したと言われる香港を舞台に、ネオン職人だった亡き夫が残した最後のネオンを完成させようとする妻の姿を描いています。   ネオンサインの有能な職人だった夫ビル(サイモン・ヤム)に先立たれた妻メイヒョン(シルビア・チャン)。夫がやり残した最後のネオンに一度は立ち向かおうとしますが、その困難さに立ちすくみます。ある日メイヒョンが夫の元工房を訪れると、そこには見知らぬ青年が……。   賑やかさ、信頼、重厚さといった様々なイメージを細いガラス製のネオンに吹き込んでいく伝統的な文化は少しずつ消えています。そんな香港の現状を物語と重ね合わせながら、アナスタシア・ツァン監督はその灯を消す訳にはいかないと奮闘する香港人の心意気をすくい取ってくれました。   一つ一つのネオンは小さなガラス管ですが、寄せ集めていくと文字のように見えるので「光の書道」とも言うそうです。  

23/11/26(日)

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