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柔軟な感性でアート系作品をセレクト

恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

ウィッシュ

ディズニーが、時代に合わせて作品世界をアップデートしてきたのはご存じの通り。その現代性はもっぱら、人種やジェンダーのバランスに目配りをしたキャラクター造形に表れてきたが、100周年記念の本作は、支配者の欺まんを暴くヒロインの物語そのものに歯ごたえを感じる。脚本・製作総指揮のジェニファー・リーと、監督のクリス・バックは、『アナと雪の女王』の監督コンビでもある。 舞台は地中海の彼方に浮かぶ島にある魔法の王国。国民は王(クリス・パイン)に全幅の信頼を寄せているが、王は己の支配欲を満たすために民の「願い」を巧妙に支配している。そのからくりを知った17歳のヒロイン(アリアナ・デボーズ)は、人々の願いを取り戻すため、舞い降りてきた小さな星の助けを得て行動を起こす。 「夢はひそかに」(シンデレラ)や、「星に願いを」(ピノキオ)など、ディズニーアニメの名作に登場する挿入歌の世界観を楽しく思い出させながら、蜂起の物語が進んで行く。これは楽しい。ジュリア・マイケルズ書き下ろしの楽曲も聴きごたえあり。とりわけ、パーカッションのきいた「真実を掲げ」のかっこよさと言ったら。陰影に富んだキャラクターたちの間で能天気に光る星の妙なかわいらしさも味わい深い。きらきらしつつも大胆不敵な映画である。

23/12/17(日)

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