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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました

韓国と北朝鮮の軍事境界線というと映画では『JSA』が有名。ドラマではあの超特大ヒットを記録した『愛の不時着』が記憶に新しいだろう。ここを舞台にしたコメディが、『宝くじの不時着』だ。しかも原題は『6/45』というロトの名なのに、日本では韓国ドラマのタイトルをもじっているのだから、宣伝もどれだけふざけているのか……(笑)。けれどそこは納得の日本タイトルで、冒頭、ロトカードが風に乗って韓国から軍事境界線を越えて北朝鮮へ不時着するくだりは、竜巻はないもののパラシュートで北朝鮮側へ不時着してしまう“あのシーン”を何故か思い出してしまう日本人なので納得。 しかも緊張状態が続く非武装地帯と思いきや、映画では冒頭から放送を使って両兵士が皮肉を言い合うゆるいシーンから始まり、“当選くじ”を手にする為に心理戦からいつの間にか酒を交わす関係にまで発展する流れが、あり得そうであり得ない面白みを生んでいる。それに観客を飽きさせないよう随所に小さな笑いのポイントが散りばめられている気配りも感じられる脚本だった。兵士なのにすぐ気絶をするギャップから、イケメンというより愛されキャラの素朴なルックスの主人公というのも好感度が高い。それだけでなく、韓国軍の主要3人も北朝鮮側の主要3人も全く違うタイプで、それぞれトリオとしてもいい味を出すし、6人になってもキャラが被らず、更に面白味を増すのだ。 もちろん、日本版タイトルを『〜不時着』にしただけあり、『ロミオとジュリエット』のような甘くてちょっと切ない恋愛模様も描かれている。これがまだ長編映画2本目というパク・ギュテ監督の笑いのセンスと考えると、今後が楽しみでならない。コロナ禍だった昨年の夏に韓国で公開され、大スターが出ているわけでもないのに5日目で興行収入1位に躍り出た本作、ベトナムでは歴代韓国映画No.1になったというんだから、“誰にでも刺さる抜群の面白さ”を持った映画だと言ったら信じてもらえるだろうか。

23/12/10(日)

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