和山やまの話題のマンガを実写映画化。実は綾野剛が原作に興味を示し、『リンダ リンダ リンダ』の山下敦弘監督が映画化した本作は、想像以上の面白さで吹き出してしまう笑いを抑えつつ、スクリーンに釘付けになる作品だった。それもそのはずで脚本は『MIU404』『逃げるは恥だが役に立つ』の人気脚本家・野木亜紀子という強力タッグが成し得た笑いと感動のコメディなのだ。 特筆すべきはヤクザにカラオケの指導をする中学生・聡実を演じる齋藤潤の目を惹く存在感と、合唱部の生徒達それぞれの性格が織りなす人間模様。学校にも嫉妬を含むいざこざがあり、外に出ると大人達の任侠の世界、家に帰ると心配する母親との小さな戦いが待ち構えている。 そんな物語に導入されるクセのある歌い方で熱唱される名曲の数々よ。もちろん綾野剛が何度も歌うX JAPANの「紅」を筆頭に、ヤクザメンバーがカラオケを披露するシーンも必見だ。好きなのに上手くいかない苦難を乗り越えようとする少年とやけに優しく語りかけるヤクザの関係をもっと見ていたくなる魔法の映画だった。

24/1/16(火)