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ジャンル横断、センスのいいセレクト

立川 直樹

プロデューサー、ディレクター

ゴースト・トロピック

映画は大きく分けると"商業もの"と"芸術もの"に分類できる。ジャズ界の巨匠デューク・エリントンは「音楽には、いい音楽と悪い音楽しかない」という名言を口にしたが、その流れでいうと、いま最も繊細で美しく、最も心震わせる映像を紡ぐ監督といわれるベルギーのバス・ドゥヴォスの映画はまぎれなく”芸術もの”のいい映画と言えるだろう。2月2日に同時公開される2019年の『ゴースト・トロピック』と2023年の『Here』の2本を観て、僕はそう思った。特に現代ヨーロッパの縮図とも言える大都市ブリュッセルを舞台に終電車を逃した掃除婦が帰宅するまでの小さな旅路を描き、当時36歳のベルギーの新鋭バス・ドゥヴォスをカンヌ映画祭が発見した記念碑的作品と評価されている『ゴースト・トロピック』は、そのゆるやかな展開と映像と音の溶け合い方が独特で忘れ難い印象を残してくれる。

24/1/20(土)

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