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植草 信和
フリー編集者(元キネマ旬報編集長)
コヴェナント/約束の救出
24/2/23(金)
TOHOシネマズ 日比谷
ガイ・リッチーといえば、切れ味鋭いアクション感覚とケレンミたっぷりのドラマツルギーによってヒット作を連発する監督として知られている。『シャーロック・ホームズ』シリーズや『ジェントルメン』、『キャッシュトラック』、準新作『オペレーション・フォーチュン』の成功が、それを証明しているといっていいだろう。 そのリッチー監督の最新作『コヴェナント/約束の救出』は、いつもの彼の作風とは大きく異なって、リアルでマジメ、社会性を盛り込んだエンタメ要素皆無の戦争アクション映画だ。今なお続くアフガニスタン問題とアフガン人通訳についてのドキュメンタリー映像から着想を得て、リアルで緊迫感に満ちた社会派ヒューマンドラマに初めて挑んだ、ということらしい。結果は、「米映画批評サイト〈Rotten Tomatoes〉では観客スコア98%を記録し、好評を博している」と媒体資料は伝えている。 物語の舞台は2018年のアフガニスタン。戦闘で重症を負った米軍曹長のジョン・キンリーはアフガン人通訳のアーメッドの献身的努力で、無事妻子の元へと帰還する。だが、自分を救ったことでアーメッドがタリバンに追われていることを知り彼を救出すために、再びアフガニスタンへ戻る、という物語。キャッチコピーの「たとえ地の果てでも、必ず俺がつれて帰る」は、受けた恩義のためには危地もいとわないヒーローの“男の勇気”が、本作のテーマであることを伝えている。 主人公のジョン・キンリーには『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホール、通訳のアーメッドにはリドリー・スコット監督作『エクソダス:神と王』で知られるイラク出身のデンマーク人俳優ダール・サリムが扮して好演。持ち前の娯楽志向を封印しても、正統的なアクション映画に仕上げるガイ・リッチー監督の手腕が発揮された戦争映画だ。
24/1/27(土)