カンヌ国際映画祭でパルムドール、さらにゴールデングローブ賞でも脚本賞と非英語作品賞を受賞。称賛の嵐の作品だが、実際に鑑賞してみると前評判通りに非常に素晴らしい。2時間半あまりの長尺がまったく気にならないほどに引きこまれる。特に中盤以降の裁判のシーンが圧巻だ。表向きは仲良く見えていた家族関係の裏側が、次々と明るみに出されていき、月並みな言い方だが人間性の深淵をのぞき込まされているような思いがある。愛し合って結婚したはずのふたりの関係が、なぜこれほどまでに崩壊し、転落していかなければならなかったのか。
加えて、夫殺害の容疑をかけられている妻が人気作家、そして死亡した夫は作家になりたいと願いながらも人生がうまく行っていないワナビーという設定が絶妙。法廷に響き渡る夫婦の諍いの録音テープ、そのシーンには震撼せざるを得なかった。傑作。