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時代と向き合う映画を鋭い視点で紹介

佐々木 俊尚

フリージャーナリスト、作家

ダム・マネー ウォール街を狙え!

2021年に起きた現実の株価騒動をモデルに、痛快なドラマへと仕立て上げている。最高に気持ちよい映画だった。本作を楽しむには、最低限ぐらいの株式市場の知識はあったほうがいいかもしれない。 業績不振なテレビゲーム小売チェーン「ゲームストップ」に、巨大ヘッジファンドが空売りを仕掛ける。株価が下がれば下がるほど、ヘッジファンドは儲かるしくみ。これに反抗の狼煙を上げたのが、本作の主人公であるユーチューバーのローリング・キティことキース・ギル。ネット掲示板レディットでゲームストップへの投資を呼びかけ、これに応じた個人投資家たちによってゲームストップの株価は高騰。ヘッジファンドが競り負け、大損を出す結果となった。 ローリング・キティに加え、彼の呼びかけに応じた市井の個人投資家たちの群像劇となっている。主人公を含めて全員がいかにも“イケてない人たち”で敗残者で、みじめな感じが半端なく描かれている。その“雑魚”たちが、大金持ちのヘッジファンドに一泡吹かせるという痛快そのものの王道逆転劇。これが面白くならないはずがない。小気味よい演出に乗って、最後まで気持ちよく観られる作品。

24/1/28(日)

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