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水先案内人のおすすめ

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柔軟な感性でアート系作品をセレクト

恩田 泰子

映画記者(読売新聞)

梟ーフクロウー

7世紀の朝鮮王朝を舞台にした歴史スリラーで、主人公は、秘密を抱えた盲目の鍼師。貧しい身から宮廷仕えとなって頭角を現すが、ある謀略を「目撃」したために追い詰められていく。ストーリーは、時の王・仁祖の長男の死をめぐる、王朝実録の記述からイマジネーションを膨らませて作られたという。鍼師の立身出世で観客を楽しませておいて、一転、スリルの渦の中にたたきこむ構成がうまい。最大の見どころは、「見ないふり、聞かないふり」が最良の処世術だと教えられた主人公が、保身と良心にどう折り合いをつけていくか。誰にとってもひとごとではないテーゼを真ん中に据えているから、この映画は強い。 ぎりぎりのところで生き抜こうとする主人公を演じるリュ・ジュンヨルは魅力的だし、卑小さを隠し持つ王役のユ・ヘジンもいい。ぎょろ目のパク・ミョンフンはいい具合に緊張をほぐしてくれる。セットもアクションも派手ではないのに、見応えを感じるのは、こうした役者の力であり、見る者の感覚、とりわけ触覚に響くシーンのうまさゆえだろう。位の高い者の体に、低い者が鍼を打つだけでもどきどきするし、主人公が眼前に鍼を突き付けられるシーンにいたっては、もう。韓国の時代劇映画を見る時によく思うことでもあるが、衣装の素材感も絶妙。私見だが、苧麻や木綿の安心感、絹のとろみや軽やかさがきちんと伝わるように撮られている映画は大抵、内容も豊かだ。

24/1/31(水)

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