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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介
堀 晃和
ライター(元産経新聞)、編集者
罪と悪
24/2/2(金)
TOHOシネマズ 日比谷
『罪と悪』の舞台に描かれたような都市部から離れた山間で育ったので、地域の濃密な人間関係は理解している。そこに人の温かさを感じる場合もあれば、過干渉と映り、息苦しくなることもあるだろう。本作の印象は後者だ。齊藤勇起監督のオリジナル脚本。人物が向き合うたび、肌がひりつくような不穏な空気に包まれる。 舞台は川が流れる地方都市。14歳の少年・正樹の遺体が橋の下で見つかった。中学の同級生だった春と晃、朔は、町のはずれに住む一人暮らしの男の犯行と直感し、3人で向かうが、もみあいになって男を殺してしまう。月日は流れて20年後、刑事になった晃が町に戻ってきた。春や朔と再会するが、河原に再び少年の遺体が…。 大人になった晃役の高良健吾の演技が作品に強い緊張感を与え、観客の注意をそらさない。一つ一つの動作にドキドキした。 終盤、川の場面で突然、大好きな映画が頭に浮かんだ。クリント・イーストウッド監督の『ミスティック・リバー』(2003年)。この映画も、いろんな渦巻く思いが水面下に沈められていた。そう気づくと、『罪と悪』に描写された川が怖くなった。普段はうかがいしれない人の暗い感情が、川面に表出しているように見えたからだ。
24/2/4(日)