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イヤな映画、主人公の悲劇がお好み
真魚 八重子
映画評論家
落下の解剖学
24/2/23(金)
TOHOシネマズ シャンテ
雪山の改装中の山荘。視覚障がいをもつ少年が、落下したと思われる父親の遺体を発見する。夫婦喧嘩が絶えなかったため、妻による殺害が疑われ裁判となる。夫婦が同じ職業なのは、時に関係を難しくするものだ。この夫婦はともに作家だが、妻はベストセラーを出し、夫は執筆もままならない状態だった。そのため住まいをリフォームし、山荘を開こうとしていたが改築が進まず、妻に八つ当たりをしていた。二人は性的にも互いに了解の下、バイセクシャルの妻は時折彼女を作り、夫が亡くなった日も女子大生のインタビュアーと気が合った様子だった。こういった状況によって、「だから殺した」のか、「だから自殺した」のか、「たまたま事故死した」のか、裁判は揺れる。夫婦間の力関係と、他者から見た夫婦のあるべき倫理は別物だ。観客も一緒に結論を模索していくタイプの映画である。
24/2/15(木)