評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
アニメも含め時代を象徴する映画を紹介
堀 晃和
ライター(元産経新聞)、編集者
ARGYLLE/アーガイル
24/3/1(金)
TOHOシネマズ 日比谷
現実なのか、空想なのか。観ているうちに、その境界が曖昧になっていく。『ARGYLLE/アーガイル』は、そんな面白さを持つスパイ映画だ。 伏線が張り巡らされているが、極論を言うと、途中で話の筋を100%理解できなくても魅力はほぼ減じない。ある映画評論家が以前、「映画とは、そのシーンを観た瞬間から忘れていくもの」といった趣旨のことを語っていたが、要は、次から次へと訪れる、きらめくような映像の波を浴びていればいい。豪快なアクションの連続が、網膜を心地よく刺激する。文句なしに楽しめる極上のエンタテインメント作品だ。 女性作家のエリー・コンウェイは、凄腕スパイのアーガイルが活躍する人気小説『アーガイル』の作者。平和な日常を送っていたが、新作の内容と実在のスパイ組織が重なって……。 マシュー・ヴォーン監督は、シリアスな物語に笑いや娯楽的な要素を巧みに織り交ぜる。両極を見せることで双方が際立つ。そんなコントラプンクト(対位法)の演出が効いている。 エリーが、身を守ってくれるスパイと列車内で出会うシーンに既視感があった。サスペンス大作『カサンドラ・クロス』(1976)の列車内でのアクションを彷彿とさせる。個人的に、ぐっときた。
24/2/28(水)