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水先案内人のおすすめ

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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

ペナルティループ

2020年の『人数の町』はダークなSFとして秀逸だった。その荒木伸二監督の新作となれば、期待してしまう。そして、その期待に十分に応えている。 6月6日、主人公の青年はある男を殺す。その理由が分からない。そして目覚めると、また6月6日となり、青年の前では同じ光景が繰り返される。しかし青年は前回とは異なる方法で、同じ男を殺す。そして、3度、4度とループしていく。 それはタイムスリップなのか、パラレルワールドなのか、何の説明もないまま物語は進む。 殺す男と殺される男のあいだには、いつしか友情のようなものが生まれるという、あまりにも奇妙な話だが、そういう展開が、ちっとも不自然ではない。 やがてそのループの理由も分かってくるのだが、どこまでが「現実」で、どこからが「仮想現実」なのか、混乱してくる。 登場人物そのものが少ないが、スクリーン上の空間での人口密度も低い。巨大な野菜工場がメインの舞台なのだが、広い空間なのに、働く人はごくわずか(しか映らない)。 セリフも、少ない。音楽も、いまどきの映画には珍しく抑制的。 暴力に満ち、血も流れるのだが、どこまでも無機質で、血の匂いも、汗も感じさせない。 そういう無機質な映像が、大きなトリックでもある。 SFなのか、ホラーなのか、ミステリーなのか、分類そのものが無意味となる。 今作も凄かった。

24/3/17(日)

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