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スリル&サプライズ映画の専門家

高橋 諭治

映画ライター

12日の殺人

映画の序盤で凶悪事件が発生し、すぐさま警察や新聞記者が真相究明に乗り出す。ところが主人公の懸命な捜査/調査は行きづまってしまい、謎が解明されないまま終幕を迎えてしまう......。サスペンス&ミステリー映画のジャンルには、そのような“未解決事件”を扱った良作がいくつかある。ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』、デヴィッド・フィンチャー監督の『ゾディアック』が代表例だ。 フレンチ・スリラーの名手、ドミニク・モル監督の新作『12日の殺人』は、上記の“未解決事件”映画の系譜に連なる実録犯罪劇だ。ある朝、閑静な住宅街で発見された少女の焼死体。モル監督は所轄の殺人課刑事たちの事情聴取や張り込みなどの捜査の過程をきめ細やかに描き、真実にたどり着けない登場人物たちの焦燥や苦悩をあぶり出す。 『ゾディアック』などよりもはるかに地味な作品だが、“回し車のハムスター”の比喩的なイメージを挿入し、捜査チームの班長である主人公ヨアンの抑圧された心理を生々しく伝える映像世界は濃密な仕上がり。くしくも本作の舞台は先日公開された『落下の解剖学』と同じグルノーブルで、山岳地帯の雄大な風景と鬱屈したドラマのコントラストも鮮烈な印象を残す。

24/3/18(月)

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