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水先案内人のおすすめ

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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

石岡タロー

茨城県の石岡駅で生き別れた飼い主の姿をずっと探していた犬の実話を映画化。しかしご当地映画に止まっていないのが凄い。それは余計なナレーションや犬の気持ちを代弁するような人間の台詞がないお陰で、犬の表情や行動をじっと見つめるカメラから次第に犬に感情移入することで世界観が広がっていたからだ。更に60年から70年代の日本の風景を、当時の鉄道やクラシックカー、バイク、ファッションや髪型まで手を抜かずに再現し、レトロな色彩にするこだわりにも脱帽した。 冒頭の仔犬と幼児の登園シーンは微笑ましく、幼少期を演じた寺田藍月ちゃんのあどけなさと仔犬のコロのつぶらな瞳がリンクして純粋な愛情の清さを観客に伝えていた。また本作の特徴のひとつに成犬となったタローと小学生たちの触れ合いと共に、学校の規則の作られ方を痛感する大人の声が聞こえてくるエピソードだ。今、『不適切にもほどがある!』や『おいしい給食』などでも昭和が舞台に描かれ、あの頃の人と人との近い距離感や寛容さに改めて気付かされるのだが、本作でも犬と出会った人々の姿から優しい眼差しが安全な空間を生むことを教えてくれるのだ。こんなインディーズ映画があったとは。犬の真っ直ぐなまでの信念といえる行動を見ているだけで感情がこれでもかと揺さぶられた。

24/4/10(水)

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