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平辻 哲也

映画ジャーナリスト

正義の行方

1992年、福岡県飯塚市で女児ふたりが行方不明となり、別の市の山中で他殺体として発見された飯塚事件。その犯人として、同じ校区の当時54歳の男が逮捕され、最高裁では死刑判決が出され、刑も執行された。しかし、男は刑の直前まで無実を主張し、弁護団は男の死後も再審請求をしている。冤罪事件とも疑われるが、その真相はやぶの中。 本作は事件関係者である警察、新聞記者、弁護団への証言インタビューで構成されたNHKのドキュメンタリー番組の映画版。少ない物証で犯人を割り出そうとする警察、事件の真相を追い、検証報道も試みる新聞記者たち、男の無罪を信じる弁護士。三者三様の「正義」が描かれ、人が人を裁き、命を奪うことが正しいのかを考えさせられる。尺が進むにつれ、迷宮の奥はますます深くなっていく。158分の長尺だが、時間を感じさせない。力作。

24/4/21(日)

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