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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

辰巳

復讐と暴力。これはイコールであり、その問題をダイレクトに描くには裏社会が確かに適している。小路紘史監督が新藤兼人賞銀賞他多くの賞を受賞した『ケンとカズ』(2016)の次に選んだのがバディものであり、裏稼業の男達との憎しみの連鎖による命懸けの戦いだった。個人的には藤原季節のシーンがもう少しカット割りで具体的に見せなくてもいいと思いながら、遠藤雄弥演じる辰巳の優しい一面を一瞬で理解させる冒頭には唸った。そして同時に彼の孤独さも感じ取れてしまった。助けたくても助けられない人が居て、それでも辰巳は目の前で起こる惨劇を淡々と自分なりに処理していく。 そんな辰巳の心を強く動かす相手というのが元恋人の妹・葵という設定に惹かれた。監督曰く『レオン』に焦がれたそうだが、恋愛が出来る年頃の葵と辰巳との関係にそれは一切ないのが気持ち良い。ただただ激しく感情を相手にぶつける葵によって突き動かされていく受けの芝居の遠藤と森田想の対等な関係が観客を引き寄せていく。しかも敵対する竜二という名前は川島透監督の伝説の映画『竜二』(1983)から取っていて、武は北野武から取っているそうだ。この遊び心にクスッとしながらそれぞれのキャラクターを掘り下げたくなる映画だったのは、説明を排除しつつ役者の魅力を信じてキャスティングした小路紘史監督の手腕でしかない。

24/4/16(火)

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