Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

ミッシング

幼女が失踪する。事故にあったのか、事件に巻き込まれたのか、何も分からない。 その幼女の母を軸にして物語は進んでいく。母と子が楽しく過ごしているときは、直接的には描かれない。失踪当時の母が、おそらく半狂乱になって探しまわる姿も、描かれない。 娘がいなくなったのが辛い日常となっているところから、映画は始まる。 子どもがいなくなってしまった母のドラマではあるが、いわゆるお涙ちょうだいの「母もの」ではない。 監督の𠮷田恵輔による脚本は、テレビの事件報道のあり方や、SNSでの被害者への誹謗中傷、メディアが冤罪を生んでいく過程など、現代社会の闇にも切り込んでいく。 一方で、幼女失踪事件を、安易な悲劇や美談に展開させず、そういう何らかの解決を期待していると、意外な結末を迎える。 とにもかくにも、石原さとみの映画。しかし、テレビコマーシャルでの明るく楽しそうな石原さとみは、この映画にはいない。笑顔は、ほとんどない。ちっとも、ファッショナブルではない。罪を犯すとか、身を売る設定ではないが、これも広義の汚れ役だろう。しかも、主人公自身が事件を起こしていくわけではなく、状況に振り回されていく受け身の役なので、より難しい。 演技だと分かっていても、石原さとみが壊れてしまったと心配になるほどの熱演だが、感動を押し付けようとはしない。スクリーンのなかにいる彼女を、唖然として見ているしかない。 けっして、楽しい映画ではないが、見てよかったと思う。

24/4/24(水)

アプリで読む