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ドキュメンタリー評論のエキスパート

村山 匡一郎

映画評論家

越後奥三面-山に生かされた日々〈デジタルリマスター版〉

40年前の映画である。わが国の民俗誌的ドキュメンタリーの先駆者のひとりとして知られる亡き姫田忠義が率いた「民族文化映像研究所」による作品のデジタルリマスター版だ。新潟県北部の朝日連峰の山間にある奥三面(おくみおもて)の集落。ダム建設で水没する運命となったこの村落を1980年から4年かけて撮影し、田植えや狩猟、冠婚葬祭や祭りなど村人たちの生活や習俗を、四季折々を通して記録している。たとえば、熊狩りでは当初は危険だということで撮影隊の同行が拒まれるが、村人たちが集団で雪深い冬山に分け入り、狩猟後の獲物の解体と分配もすべて共同で行われ、まさに集落共同体の原点を見る思いがする。今日ではほとんど見ることができない日本の原風景を記録した貴重な映像世界である。

24/4/22(月)

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