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水先案内人のおすすめ

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アジア、中東、欧州の話題作・問題作を

夏目 深雪

著述・編集業

無名

1940年代の上海を舞台に中国共産党、国民党、日本軍、お互いの素性が分からないまま入り乱れるスパイ・ノワール……といえば、ロウ・イエの最新作『サタデー・フィクション』を思い出すが、話や設定は複雑だがこちらはキャラの立ち方と俳優の情感で理解しやすい。 俳優の豪華さが特筆すべき点であろう。香港のスター俳優トニー・レオン、中国の新星ワン・イーボー、トニーとの絡みが短い時間だがさすがの情感が漂う中国のベテラン女優ジョウ・シュン。 今東京都現代美術館で個展『エージェントのA』が開催され、その関係で来日したシンガポールの鬼才ホー・ツーニェンは、この映画は自分の短編の影響ではないかと述べた(冗談だろうが)。ホーはマラヤ共産党書記長を務めながら仏・英・日の三重スパイだったというライ・テクを題材にした『名のない人』という短編を撮っていて、それはトニーの過去作を繋ぎ合わせるという驚くべき手法で構成されている。何故なら、トニーほど多くのスパイや潜入捜査官の役を演じた俳優はいないからである。 ワン・イーボーはメガヒットのスカイアクション『ボーン・トゥ・フライ』が6月28日から公開予定。ジョウ・シュンはそもそもロウ・イエの『ふたりの人魚』の主演女優だった……など、俳優に幻惑されるのもよし、中国映画における二重性に想いを馳せるもよし、ただアクションを堪能するのもよし。様々な楽しみ方ができる映画である。

24/5/1(水)

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