監督が『新聞記者』の藤井道人監督だと知って驚いた。ストーリーだけ追うと邦画では定期的に撮られるような甘酸っぱい青春ものであり、作風的には乖離しているので。ただ岩井俊二監督の『Love Letter』へのリスペクトのある引用の仕方が、台湾文化をよく知っていると思わせ（『Love Letter』は台湾では社会全体に影響が広がり、主人公の名前である藤井樹というペンネームの作家がいたり、小樽を舞台にした純愛ドラマが製作されたりした）、それもそのはず藤井監督は祖父が台湾出身だということ。 たとえ台湾映画であっても、台湾滞在時のことを思い出させてくれる映画ばかりではないが、この映画が思い出させてくれたのは、日本／台湾、旅行／人生、生／死、それぞれその二つの間にあるものを丁寧に掬い取っているからだろう。主役のシュー・グァンハンと清原果耶の瑞々しさも特筆すべき。黒木華や松重豊、黒木瞳など脇役まで豪華で、岩井俊二監督作品を彷彿とさせるところもあり、とにかく事前情報を入れずに、まっさらな気持ちで観てほしい。

24/5/2(木)