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笠井 信輔

フリーアナウンサー

関心領域

こんなに静かで恐ろしい映画だとは。 世界大戦時、無数のユダヤ人が虐殺されたアウシュビッツ収容所の周辺地域を当時「関心領域」と呼んだと言う。そして収容所と壁一枚隔てた隣の豪邸に住む所長一家の生活“だけ”を描く。 ジョナサン・グレイザ一監督は、収容所で行われていることを一切見せない。 でも、世界中の観客はその光景を知っている。延々と描かれるのは美しい邸宅の庭と、家族の幸せな生活だ。『関心領域』で描かれるのは、「無関心領域」なのだ。 日々の生活の中で、我々は自分の幸せを荒らされたくないと、無関心を装っていないか? 作品の矛先は観客に向き、そしてあの衝撃のラストに、誰もが席を立てなくなる。

24/5/8(水)

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