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映画館の暗闇とスクリーンで観てほしい映画を紹介します!

中谷 祐介

編集者(ぴあ)

革命する大地

大量のフッテージの使用、モーショングラフィックの多用など、デジタル技術の導入以降、一部のドキュメンタリー映画の語りに変化が生じたと思います。映画として構成要素が増える利点がある一方、使い方をミスると散漫になるリスクもあるでしょう。 1969年以降のペルーの社会変革と闘争を描いた本作は、フッテージ映像の使い方が巧みです。インタビューによって当時の様子が語られ、そこに過去の映像や劇映画の引用が混ざるのですが、単に当時の様子を伝えるために映像を使用するのではなく、その映画が作られた時代のムードや、その映画の奥底にある情念が感じられる引用になっています。 そして、土地と市民権をめぐって政治家、市民、軍部が闘争を繰り広げ、社会がある部分では変化し、ある部分は堂々巡りを繰り返す中で、引用される映画のトーンも変化していくことがわかります。 本作はペルーの歴史、革命の歴史を描く作品でありながら、「映画は常に時代の波を受けている」ことを感じられる作品でもあります。 ペルー史、革命史に興味のある方はもちろん、映画が好きな方にもおすすめです。

24/5/12(日)

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