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政治からアイドルまで…切り口が独創的
中川 右介
作家、編集者
からかい上手の高木さん
24/5/31(金)
TOHOシネマズ 日比谷
『赤いスイートピー』は、知り合った日から半年が過ぎても手をにぎらない話だが、これは10年過ぎても手をにぎらない話。 アニメにもなっている人気コミックの実写映画。同じスタッフによる実写テレビドラマもある。映画冒頭とラストの、主人公ふたりの中学時代の回想シーンは、そのテレビドラマ版の映像だ。だから、ネットフリックスなどでテレビドラマ版を見てから見たほうが楽しめるが、先に映画を見てから、ふたりの過去を知るために、テレビドラマ版を見てもいいかもしれない。 原作コミックは、ふたりの中学時代を描いた本編と、ふたりが結婚して子どもがいる続編と、さらに、その娘が中学生になったスピンオフまである。テレビドラマ版の後半は、原作とは別の展開をしていて、この映画はその直接の続編という位置づけで、コミックでは描かれていない部分を埋めるオリジナル・ストーリー。 主人公ふたりは、中学時代、クラスメイトからは、「いつも仲がいいふたり」と思われていて、互いに相手が好きなのに、それを告白できないまま、彼女はパリへ引っ越してしまう。それから10年が過ぎ、20代半ばになって再会するのだが、ふたりの関係は、相変わらず、なかなか進展しない。 中学生ならそれでもいいが、大人になっているのにグスグズしているので、見ていてイライラするほど。しかし、それが、この「高木さん」シリーズの楽しみだ。 男子の「西片」(高橋文哉)は母校の教員になっていて、女子の高木さんは(永野芽郁)は教育実習生なのだが、このふたりよりも、生徒たちのほうが恋愛においては、よっぽど大人なのが、面白い。 小豆島でロケされ、美しい風景そのものが、ひとつの小道具にもなっている。
24/5/30(木)