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水先案内人のおすすめ

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平辻 哲也

映画ジャーナリスト

莉の対

コロナ禍はエンタメ界に危機感を植え付け、新たな才能を開花させた。本作の監督は三井住友銀行に就職するも1年で退職し、俳優に転身した田中稔彦。舞台を中心に活躍していたが、コロナ禍で舞台業界がストップする中、独学で撮影、編集、さらにドローン免許も取得した。 田中は「待っているだけではダメだ。長編映画を作って、海外の映画祭で賞を取ろう」と決意し、本作の製作に着手。クランクインの時はスタッフ、キャストは2人だけ。それが190分の長尺となり、世界三大映画祭に次ぐ重要な映画祭の一つと言われるロッテルダム国際映画祭で今年2月にグランプリ(タイガー・アワード)を受賞した。日本映画の受賞は約10年ぶりで、単独での受賞は日本映画史上初の快挙となった。 東京と北海道を舞台に、自分に自信を持てない光莉(鈴木タカラ)と耳が聞こえない写真家・真斗(田中稔彦)を中心に、悩み多き人々の姿を描く。物語はオーソドックスな群像劇だが、登場人物それぞれに愛情が向けられ、丁寧に作られている。誰もが、登場人物の誰かに自分を重ねられるはず。新たな才能の今後にも注目したい。

24/5/24(金)

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