母親の誕生日を祝おうと温泉旅館を予約し集まった三姉妹。この三人の畳みかけるような会話が、本作のほとんどを占めている。ペヤンヌマキの演劇作品が原作とあって、場面のほとんどは旅館の客室内、登場人物は三姉妹と三女の婚約者のみという非常にシンプルな舞台装置。なんと母親は画面に登場してこないのだ。
しかしこのシンプルさが逆に効を奏して、三女一男の四人の関係性がキレイに浮き彫りになり、それぞれの愛らしいところと嫌味なところという性格の両面も見事にわかりやすく描かれる。長女役の江口のりこの好演で、三姉妹のいがみあいが実にリアルで観ているだけでイライラしてきて、「この作品、どうやってエンディングに持っていくんだろう?」と心配させるほどイライラするが、最後は見事に「怒って泣いて笑って」の理想的なホームドラマへと昇華している。さすが橋口亮輔監督。