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芸術・歴史的に必見の映画、映画展を紹介

岡田 秀則

国立映画アーカイブ主任研究員

展覧会「ゲバルト:制度の暴力に対する抵抗の変遷」

1960年代以降の日本の反体制運動をめぐる芸術表現が改めて注目を浴びているようだ。昨年東京都写真美術館で開催された「風景論以後」展で上映された『略称・連続射殺魔』に、20代の人々を含む多くの来場者が見入っていたのも記憶に新しい。 フランス/アルジェリア人の美学研究者アレクサンドル・タルバを中心とする団体が企画したこの「ゲバルト」展には、権力や資本の抑圧に抵抗する作品を発表してきた国内外の現代美術作家が招かれ、インスタレーション、絵画、コラージュなど多様な形でリアクションを繰り出している。しかし今回、イスラエルによるガザ空爆のいま改めて注目せざるを得ない『赤軍-P.F.L.P 世界戦争宣言』(1971年)にもまして注目したいのは、城之内元晴の実験作『ゲバルトピア予告』(1969年)だ。男の裸体に書かれた美しい文字、映画史上のさまざまな怪物たち、ヒトラーの演説からつげ義春「李さん一家」の再現まで、乱舞する映像はやがて反乱学生たちの断片的なイメージの奔流になだれ込む。のちの衝撃作『新宿ステーション』(1974年)を準備する、13分にもわたるカオティックな「予告」篇だ。 それらの映像は、空間を完全には区切れない美術館のホワイトキューブの壁に投射されているのではなく、閉じられた小部屋の中で上映されているのが魅力的だ。もうすぐ終了、6月16日まで。

24/6/11(火)

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