Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

文学座公演『オセロー』

文学座がシェイクスピア四大悲劇のひとつ、『オセロー』を取り上げた。劇団にとって極めて珍しい、と思える傑作への挑戦である。昨年から今年にかけて演劇界はシェイクスピア作品が目立つ。なぜだろう? 以下は独断的な私見だが、笑いを取るばかりの公演やテレビのホームドラマの如き演劇に、観客は食傷気味なのだ。先行きが不透明な世界の状況下、自分の足元を確かめたり原点を再考したい──。『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』然り。『オセロー』は単なる夫婦間の問題ではなく、差別や創造力を内包している傑作悲劇だ。 注目の第一は配役。中でも、清純な貴女デズデモーナに大抜擢された新進女優のsara (24)だ。『GREY』でも抜擢されたのだが、今春、座員に昇格したばかり。低いハスキーな声の持ち主で、ミュージカルもいけるらしい。 主役オセローは横田栄司。蜷川幸雄演出で活躍していた個性は。直情の武将、ムーア人のオセローは適役だ。そのオセローに妻の不倫を吹き込む旗手イアーゴーが浅野雅博。まるで脱皮したかのような演技の成長には驚く。キャシオーが上川路啓志。ロダリーゴーは石橋徹郎。劇団の近未来を中心的に牽引するだろう中堅陣を揃えた。 演出は鵜山仁、美術が乘峯雅寛。小田島雄志・訳による劇団の総力戦である。

24/6/19(水)

アプリで読む