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大島 幸久
演劇ジャーナリスト
文学座公演『オセロー』
24/6/29(土)~24/7/15(月)
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA、 可児市文化創造センター ala、 長岡リリックホール シアター
文学座がシェイクスピア四大悲劇のひとつ、『オセロー』を取り上げた。劇団にとって極めて珍しい、と思える傑作への挑戦である。昨年から今年にかけて演劇界はシェイクスピア作品が目立つ。なぜだろう? 以下は独断的な私見だが、笑いを取るばかりの公演やテレビのホームドラマの如き演劇に、観客は食傷気味なのだ。先行きが不透明な世界の状況下、自分の足元を確かめたり原点を再考したい──。『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』然り。『オセロー』は単なる夫婦間の問題ではなく、差別や創造力を内包している傑作悲劇だ。 注目の第一は配役。中でも、清純な貴女デズデモーナに大抜擢された新進女優のsara (24)だ。『GREY』でも抜擢されたのだが、今春、座員に昇格したばかり。低いハスキーな声の持ち主で、ミュージカルもいけるらしい。 主役オセローは横田栄司。蜷川幸雄演出で活躍していた個性は。直情の武将、ムーア人のオセローは適役だ。そのオセローに妻の不倫を吹き込む旗手イアーゴーが浅野雅博。まるで脱皮したかのような演技の成長には驚く。キャシオーが上川路啓志。ロダリーゴーは石橋徹郎。劇団の近未来を中心的に牽引するだろう中堅陣を揃えた。 演出は鵜山仁、美術が乘峯雅寛。小田島雄志・訳による劇団の総力戦である。
24/6/19(水)