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夏目 深雪
著述・編集業
このろくでもない世界で
24/7/26(金)
TOHOシネマズ シャンテ
韓国ノワールは質の高さに定評があるが、男たちの絆がメインテーマだったり、その絆をベースに闇の世界を肯定的に描くものが多かった。父親や継父の虐待が原因で道を踏み外してしまい、闇の世界しか行き場をなくした若者ふたりが束の間尽くし合い、その親愛の情が思わぬ結末を生む本作は本質的なところを突き、深みがある。 地元の犯罪組織のリーダー、チゴンに『スペース・スウィーパーズ』のソン・ジュンギ。継父のDVに苦しみ、チゴンに拾われるヨンギュに新鋭ホン・サビン。意外性のある配役や、あどけなさが残るふたりだからこそ、ふたりの複雑な関係を繊細に表現し切った。 最近韓国映画は女性監督による傑作が続いていたが、この作品が初長編作品となるキム・チャンフンは、デビュー作がカンヌ映画祭に招待され、次作を待望されていた。生計のためモーテルでアルバイトしながら、受付のカウンターで脚本を執筆したというがそんな状況が、ヒリヒリするようなリアリティを生み出したのか。ポン・ジュノやパク・チャヌクとも違う新たな才能の誕生を感じさせる。
24/7/6(土)