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村山 章

映画ライター

HOW TO BLOW UP

すでに上映終了した劇場もあるが、これから上映が始まるところもあるので慌てて紹介したいのが『HOW TO BLOW UP』。エドガー・ライトや『エブエブ』のダニエル・シャイナートといった気鋭の映画作家が絶賛したというのも納得の怪作だった。 名の通った出演者は『アメリカン・ハニー』やドラマシリーズ『ロキ』のサッシャ・レインくらいのもので、「環境問題に怒る若き活動家たちが石油パイプラインの爆破テロを計画する」というプロットも決してポップとはいえない。しかし、テログループ8人が爆破計画に向けて地道に準備を積み重ねていく姿は、銀行強盗もののようなハイストムービーを模していて、やけに臨場感とエンタメ感があって目が離せなくなる。 そして断片的ながらもそれぞれの背景が明かされることで、われわれ観客は「テロはダメ、絶対ダメ!」という常識と、彼らのやむにやまれぬ事情との狭間に立たされることになる。さらにジャンルムービーの形式をなぞっているがゆえについ「こういうお話って結局こうなるよね」みたいに予想してしまう映画好きのしたり顔を、思いっ切り裏切ってみせる展開に戸惑わされるのはおそらく自分だけではあるまい。 積極的に観客の倫理観を逆なでするアジテーションの要素も強く、作り手の意図を測りかねるところはあるのだが、監督インタビューや作品解説だけでなく、周辺情報や背景まで深堀りした劇場パンフレットが近年随一のクオリティだったので、それも含めてオススメしたい。近場で観られるようなら脳に刺激を与えるためだと思ってゼヒ!

24/7/2(火)

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