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水先案内人のおすすめ

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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

お隣さんはヒトラー?

まるで舞台劇のように、閉ざされた空間での、数週間という短い期間のなかで展開される、人間ドラマ。 舞台となるのは、1960年の南米コロンビアの町外れにある、2つの隣りあった家。 そのひとつに住むポーランド出身のユダヤ人・ポルスキーは、家族をホロコーストで殺され、ひとりで暮らしている。空き家だった隣家に、ある日、ドイツ人・ヘルツォークが引っ越してくる。夜なのにサングラスをかけている怪しい人物で、その目を見たとき、ポルツキーは、ヘルツォークがヒトラーではないかと疑う。 ポルツキーがヒトラーについて調べていくと、その身体的特徴や性格などがヘルツォークに合致しているので、ますますヒトラーだとの思いを強くしていく。 彼がそう思うのは、当時、南米アルゼンチンで、ナチス幹部だったアドルフ・アイヒマンがイスラエルの情報機関モサドに発見されたからだ。アイヒマンが生きていたのなら、ヒトラーだって生きているかもしれないではないか。 1945年のベルリンでヒトラーは自殺したことになっているが、ちょっと怪しいのだ。焼けた遺体をヒトラーだと認定したのがソ連軍だったということから生存説が生まれるのは、無理もない。私も70年代なかばの中学時代、友人たちと夢中になって、ヒトラー生存説を語り合った記憶がある。 もしかしたらこの映画は、ヒトラーが生きていた証拠が発見されたという立場のものなのかと思いながら、見ていたので、だんだん、その気になってしまった。 そして、ある夜、ポルスキーは「あること」から、ヘルツォークがヒトラーだと確信する。 これ以上はネタバレになるからやめておくが、歴史のなかのほんの小さな亀裂をうまく利用したストーリーに感服した。90分程度と短いのもいい。 ポルスキー役のデヴィッド・ヘイマンと、ヒトラーかもしれないヘルツォーク役のウド・キアの演技もさることながら、2人が暮らす隣り合った2軒の家がよくできている。こんな所、よく見つけたものだと思って公式サイトを見たら、この映画のために、家ごと建てたという。すばらしい。

24/7/14(日)

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