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イヤな映画、主人公の悲劇がお好み

真魚 八重子

映画評論家

デビルクイーン

1974年のブラジル映画。当時は軍事政権下で文化人たちも弾圧を受けた中、ドラァグクイーンが大勢登場する作品が作られていたことが驚きだ。それも実話をモデルにしており、リオのカーニバルにドラァグダンサーとして登場しながら、裏社会では非情な殺人を行っていた、同性愛者のギャング「マダム・サタン」という人物が実在していたというのも仰天してしまう。この映画では普段からドラァグクイーンとして暮らしつつ、ギャングのボスとして恐れられるデビルクイーンが主人公。まぶたを大きく彩る鮮やかなアイシャドウが特徴的で、頻繁に塗り替えられるそれは、まるで喜怒哀楽をラメパウダーのカラーが表すかのよう。しかしクイーンの恐怖政治も徐々に雲行きが怪しくなる……。まさにスーザン・ソンタグが定義した“キャンプ”という言葉を象徴する映画だ。

24/8/10(土)

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