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ドキュメンタリー評論のエキスパート
村山 匡一郎
映画評論家
箱男
24/8/23(金)
TOHOシネマズ シャンテ
今年は安部公房生誕100周年に当たるが、その安部が1973年に発表した「箱男」は、記述者が異なる幾つかのパートを背景にした解釈自由の奇想天外な小説だ。その小説を、石井岳龍監督が27年前に撮影直前で製作中止になった経緯を乗り越えて映画化を実現。箱男の「わたし」(永瀬正敏)がニセ医者(浅野忠信)と元軍医(佐藤浩市)の間で、箱男になる/ならない、見る/見られる、本物/ニセ物などの対立項をめぐって展開され、原作のシュールで荒唐無稽な世界を巧みに落とし込んで味わい深い。「箱男とは誰か?」というラストの問いかけとその答えも興味深い。原作が最近になって文庫版で再販されたこともあり、映画を観て小説を読みながら、安部公房と石井岳龍監督の世界を比較するのも一興だろう。
24/8/23(金)